もし将来消費税の税率が上げられたときに、「インボイス方式」の導入が必要だということが言われています。
インボイス方式というのは、消費税の登録業者番号、取引の内容、取引金額、消費税の金額などを取引のつどインボイス(請求書や領収書)に記載し、取引の相手方に渡すことを言います。日本の消費税の原型となった英仏独国などの付加価値税(VAT)で採用されているものです。
消費税というのは、事業者が売上にかかる消費税を国に納付する際に、事業者自身が負担している消費税相当額を控除できることになっています(これを仕入税額控除といいます)。
この仕入税額控除を認める要件として、現在は、取引の内容を帳簿に記載することと、その取引に関する請求書・領収書を保管しておくことを義務づけています(帳簿方式、請求書保存方式などと言われます)。
実際の請求書や領収書には、消費税の金額が明記されているものが大半であり、それほど「タックスインボイス」との差はありません。
ではインボイス方式を導入すると何が違うのか。
免税事業者が取引から排除されることが懸念されています。
インボイスを発行しない(できない)事業者というのは、消費税の免税事業者になります。現在は、基準期間(2年前)の課税売上が1000万円以下であれば消費税の免税事業者になります。
インボイスが発行されないと、仕入れをした事業者で仕入税額控除ができません。そこで、免税事業者からは買わないという事業者が出てくる可能性があります。
逆に言うと、インボイス方式が導入されていない現状では、免税事業者が消費税を納めていないのに、仕入れた事業者で仕入税額控除ができていることになります。消費税が納税されているかいないかを判断しようがないからです。
よく免税事業者を捕まえて、消費税をもらっているのに納めておらず「益税」だ、と言われますが、免税事業者であっても自身の仕入には消費税を負担していますし、売上に十分消費税を載せることができていない価格交渉力が弱い事業者も多いと思います。むしろ「損税」かもしれません。
「益税」は、仕入れをした事業者側に発生していることになります。
それを透明にするためにインボイス方式にすると免税事業者が取引から排除される懸念があるということになります。取引から排除されないためには、課税事業者を選択することになるかもしれません。それも経営的に厳しい事業者が多いでしょう。
しかし、税率が10%とか15%などになるようなことがあれば、「益税」で済ませる金額ではなくなります。さらに食料品に軽減税率適用などの複数税率になると、インボイス方式は必須です。
このように消費税増税は、各論でもいろいろ問題点があります。そもそも不景気に消費税増税は危険だとも言われています。このような国難の時期であるからこそ、国の基盤を決める税制論議はしっかりやってもらいたいと思います。