オバマ大統領の再選が決まり、アメリカでも富裕層への課税強化が話題となっています。
アメリカと日本の政治状況は大きく異なりますが、富裕層への増税が話題になるということでは共通しています。
今週、民主税調が、富裕層への所得税・相続税の増税を打ち出した報道がされています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121108-00000006-asahi-pol
このコラムでも書いていますし、セミナーでもいつも話をしていますが、これら高所得者や資産家への課税強化は、既に税制改正の規定路線となっています。
消費税の増税法案を通すときに、所得税・相続税の増税と切り離さなければ、消費税法案が通らないということで、平成25年税制改正論議(つまりこの時期)で話をすることとなっていたものです。
私が気になるのは、このような報道で「富裕層」という言葉を使うことです。
所得税の最高税率が現行の40%(住民税を含めると50%)から、45%(同55%)にする議論があります。現在の最高税率の対象は、課税所得(経費や各種控除を差し引いた後の金額)が1,800万円以上ですので、かなり高額の所得を得ている方が対象です。
一方で、相続税の基礎控除は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数(たとえば、相続人が妻と子二人の場合は8,000万円)から、3,000万円×法定相続人の数(同4,800万円)となります。
これが「富裕層」という言葉から連想する人たちだけに課税強化されるものかというとそうとは言えません。相続税の課税に関しては、かなり課税の裾野が広がるからです。
アメリカの場合は、選挙で選ばれたオバマ大統領が政策を実現しようと、中間層の減税とセットで「富裕層」課税強化がなされます。
消費税の増税で「庶民」の税負担が重くなることとのバランスで、更に「富裕層」への課税強化をするという日本とはずいぶん環境が違います。
増税の上に増税が乗っかる日本の「富裕層課税」と、アメリカの「富裕層課税」論議の違いを理解した上で、報道に接したいものです。
少なくとも、日本の場合は「富裕層」のみに対する課税強化だと思ったら、大間違いかもしれません。気をつけなければいけません。