2012年11月11日:「富裕層増税」は人ごとじゃない

オバマ大統領の再選が決まり、アメリカでも富裕層への課税強化が話題となっています。

 

アメリカと日本の政治状況は大きく異なりますが、富裕層への増税が話題になるということでは共通しています。

 

今週、民主税調が、富裕層への所得税・相続税の増税を打ち出した報道がされています。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121108-00000006-asahi-pol

 

このコラムでも書いていますし、セミナーでもいつも話をしていますが、これら高所得者や資産家への課税強化は、既に税制改正の規定路線となっています。

 

消費税の増税法案を通すときに、所得税・相続税の増税と切り離さなければ、消費税法案が通らないということで、平成25年税制改正論議(つまりこの時期)で話をすることとなっていたものです。

 

私が気になるのは、このような報道で「富裕層」という言葉を使うことです。

 

所得税の最高税率が現行の40%(住民税を含めると50%)から、45%(同55%)にする議論があります。現在の最高税率の対象は、課税所得(経費や各種控除を差し引いた後の金額)が1,800万円以上ですので、かなり高額の所得を得ている方が対象です。
 

一方で、相続税の基礎控除は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数(たとえば、相続人が妻と子二人の場合は8,000万円)から、3,000万円×法定相続人の数(同4,800万円)となります。

 

これが「富裕層」という言葉から連想する人たちだけに課税強化されるものかというとそうとは言えません。相続税の課税に関しては、かなり課税の裾野が広がるからです。

 

アメリカの場合は、選挙で選ばれたオバマ大統領が政策を実現しようと、中間層の減税とセットで「富裕層」課税強化がなされます。

 

消費税の増税で「庶民」の税負担が重くなることとのバランスで、更に「富裕層」への課税強化をするという日本とはずいぶん環境が違います。

 

増税の上に増税が乗っかる日本の「富裕層課税」と、アメリカの「富裕層課税」論議の違いを理解した上で、報道に接したいものです。

 

少なくとも、日本の場合は「富裕層」のみに対する課税強化だと思ったら、大間違いかもしれません。気をつけなければいけません。

2012年11月4日:橋下氏の税に対する発言

大阪市長の橋下氏が、消費税を11%に引き上げ、うち6%を地方間の税収格差を是正するための財源にする案を発言したそうです。

http://mainichi.jp/select/news/20121030k0000e040169000c.html

あまり橋下氏の税に対する発言に注目して来なかったのですが、インターネットで見てみると、橋下氏はTwitterでは相続税の課税強化についても言及しているようです。

実際のtwitterを見てみると、橋下氏の10月30日のツイートでは、社会保障の財源不足を相続税で考える趣旨の発言が並んでおり、具体的な制度改正についても語っています。

「基礎控除をなくして一律課税にすると高齢者が増えれば理論的にはそれに対応して税収は伸びるし、景気にほとんど影響を与えない。」

この他、あらためて維新八策を見ると、「超簡素な税制=フラットタックス化」などの文言も並びます。

これら政策を支持するかどうかは、個々人で考えることですが、今の税制になじんでいる(なじんでしまっている)立場からすると、極めて斬新な案に映ります。

既存制度にとらわれずゼロベースで未来を考えることは、大切なことです。特に今の日本の閉塞感を破るためには、既存の制度を根本から見直す必要があるのかもしれません。

一方で、税という自分の専門領域に限定すると、混乱を避けるためには一定の継続性が必要だとも思います。

橋下氏の案には、いろいろ突っ込みたい点もありますが、大いに税に対する議論が盛んになることは大歓迎です。

2012年10月27日:転嫁対策調査官

消費税が増税になったときに、消費税分を価格に転嫁(売上への上乗せ)ができないと、経営を圧迫することになります。立場の弱い中小企業は、取引先の大企業から転嫁を拒否される恐れがあると見られています。

政府がこの「価格転嫁」問題への対策に乗り出したというニュースです。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20121026-00000021-biz_fsi-nb

チェックするために「転嫁対策調査官」を経済産業省など各省に設置するそうです。

「転嫁対策調査官」は、増税分の上乗せを拒否した企業に対しては、公取委などと連携して行政指導を行い、指導に従わない企業は公正取引委員会が増税分の支払いを勧告します。勧告に従わない企業は、企業名の公表や罰則も科すこととするようです。

税務署は、納税義務者である事業者(法人、個人事業者など)から消費税を徴収することしかしません(できません)。ぜひ転嫁対策調査官と公正取引委員会は中小企業の味方になってもらいたいものです。

心配なのは、実際に機能するかどうかです。転嫁を拒否された中小企業が、本当に相談窓口に駆け込んでくれるのかどうか。そんなことをしたら、それこそ取引をしてもらえなくなると考える中小企業経営者が大多数であるように思えてなりません。

消費税の仕組み(仕入税額控除)を正しく理解していれば、価格転嫁を拒否することは値下げを強要することと同じ意味だと理解できます。

転嫁拒否は、便乗値下げなり。

今や消費税は、経理部の人だけでなく、ビジネスマンの常識として広く理解される必要があるのではないでしょうか。

2012年10月21日:「仕入控除で消費税逃れ」報道

10月19日(金)朝日新聞の朝刊の記事に、「仕入れ控除で消費税逃れ」という記事が掲載されていました。

http://www.asahi.com/national/update/1019/TKY201210180854.html

消費税というのは、納税義務者である事業者が消費者や取引先に消費税を転嫁(納めるべき消費税相当額を売上に上乗せして請求すること)した上で国に納めるべき税金です。

消費税を納めるときに、事業者自身が仕入や経費として支払っていた消費税について、一定のルールに基づいて控除をすることができます。

これを「仕入税額控除」とよんでおり、この控除をしないと事業者に過大な消費税の税負担となります。

消費税は、酒税やたばこ税などと同じ「間接税(納税義務者と税負担者が異なる税のこと)」と呼ばれていますが、それらの税と異なり流通のあらゆる段階で課税がなされます。

あらゆる段階で課税がなされるからこそ、「仕入税額控除」という仕組みを設けて、税の累積による過度な税負担が排除されています。

難しい表現になってしまってすいません。

言いたいことは、仕入税額控除は、消費税の仕組みを成り立たせるために必要なルールであって、納税者に与えられた恩典などではないということです。

消費税法の条文で、一定の帳簿保存や詳細な控除ルールが定義付けられていることから、仕入税額控除は納税者に認められている一種の恩典のような位置づけと誤解されることがあります。

この記事では、実際に行っていない仕入れにかかる消費税を控除して納付すべき消費税を過少申告したといった不正が報道されています。

これは明らかに消費税法に反した行為であり問題です。しかし「仕入れ控除で消費税逃れ」の見出しに違和感を覚えます。

この見出しを見た読者は、消費税の仕組みとして不可欠な「仕入税額控除」そのものに問題があるというように誤解するのではないでしょうか。

消費税の税率アップに向けて、脱税を指摘しようとするこの記事自体は結構だと思いますが、見出しはもっと本質を捉まえたものにしてもらいたいと思います。

2012年10月14日:復興増税の源泉税の計算

復興財源が被災地以外で使われていることが大きな話題となっています。

被災地と離れている税務署の耐震改修にも使われているという報道もあり、驚きました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121006-00000005-asahi-pol

来年度から所得税が復興財源のために増税されます。平成25年1月1日以降の所得税の源泉徴収から適用されることになります。

復興増税は、通常の所得税が2.1%増しになります。毎月の給与にかかる所得税も2.1%増しとなります。

また個人に対する講演料の報酬など10%の源泉徴収対象である支払いは、10.21%の源泉徴収が必要となります。

たとえばこれまで手取りで20,000円の報酬を払うために、所得税込で22,222円の講演料を払うと決めていた場合には、22,222円×10.21%=2,268円の源泉所得税となります。

したがって手取りは、22,222円‐2,268円=19,954円となり、20,000円の手取り報酬にはならなくなります。

この場合、20,000円÷(100%-10.21%)=22,274円と計算をして、所得税込の報酬を計算します。22,274円×10.21%=2,274円が源泉所得税となり、22,274円-2,274円=20,000円の手取りとなります。

被災地の復興のためにと国民が納める税金を、しっかり復興のために使ってもらわなければ許されることではありません。納税者の権利として、しっかり見て行きましょう。

2012年10月8日:消費増税の駆け込み需要

ご存知の通り平成26年4月1日から消費税8%への増税が決定しています。まだまだ先と思っていると、あっという間にその日が来ます。

消費税は一部の非課税を除き、すべてのモノとサービスに同じ税率で課税がされるので、経済的に中立という説明がなされますが、税率の上昇局面においては、著しく経済に影響を与えます。

そんなこともあり、各種報道でも不動産などを増税前に買った方が良いのか、その必要はないのかなどの記事が出回るようになりました。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121007-00000012-pseven-soci

知っておきたいのは、前にもコラムで書きましたが、消費税法に「請負工事等に関する経過措置」が設けられていることです。平成25年9月30日までに請負工事等の契約を締結し、平成26年4月1日以降にその契約にかかる引き渡しがなされる場合には、消費税の税率は改正前の5%が適用されることになります。

また住宅ローン控除の拡大も検討されており、現在住宅ローン残高の1%控除とされている制度が、最大2%まで控除が拡大されるのではないかと報道されています。これが実施されると、消費税の増税分は数年で取り戻すことができます。駆け込み需要の抑制の効果があり、増税後の価格への影響も注目されます。

駆け込み需要が喚起されることそのものが、消費税増税の目的のひとつだけに、政府に踊らされている感もありますが、しっかり勉強をして損をしないようにしたいものです。

不動産の購入は大切なイベントです。不動産業者やハウスメーカーなど売り手の話だけではなく、信頼できる税理士に相談をして、間違いのないようにしましょう。

ちなみに税理士法の定めにより、税金の相談に乗ることができるのは税理士・税理士法人のみとされていますので、ご注意ください。

2012年9月30日:地球温暖化対策のための税

10月1日からいわゆる「環境税」、正式名は「地球温暖化対策のための税」が施行されます。

そもそもエネルギー課税という括りでは、現在でも揮発油税、軽油引取税、石油石炭税などという税目で、さまざまな税金が課されています。

http://www.env.go.jp/policy/tax/taxes.pdf

今回の「地球温暖化対策のための税」は、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から導入するものであり、原油やガス、石炭といった全化石燃料に対して、CO2排出量に応じた税率を課すものと説明されています。

急激な税負担にならないように、3段階にわけて増税されます。平成24年10月1日施行時点では、本来の税金の3分の1しか課税されません。平成26年4月1日、平成28年4月1日と増税されることになります。

ガソリン代、ガス代、石油を発電に使う電気代の価格に転嫁されてくることから、各家庭の負担は、現在と比較して平成28年では月100円程度の増加と試算されています。

税の目的は、税収を温暖化対策のために使うことと、負担増を嫌う家庭などで冷暖房の温度調整をしてもらいエネルギー使用を抑制することにあります。

「税金の負担がコストに跳ね返ってけしからん」と怒りを覚える方は、冷暖房の使用を控えることで対抗策をとってくださいという税金なのです。

しかし家庭と違い、事業者は簡単に電気やガスの使用を抑制することはできません。私が見たテレビニュースでも、中華料理屋や銭湯が取材されていましたが、今の時代は簡単に価格転嫁というわけにはいきません。

ガソリンスタンドなどは、コスト負担がガソリン1リットルあたりだと円未満になることから、価格転嫁をしようにも逆に便乗値上げと言われかねず苦闘しているという報道もあります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120929-00000109-san-bus_all

消費税はもちろん、相続税、所得税の増税見込みと、政府がどんどん大きくなっていきます。

みながエネルギーの節約をすれば、そもそもこの税金はいらないものです。果たしてこれでいいのだろうかと思わされる、「地球温暖化対策のための税」の施行は明日です。

2012年9月23日:税務調査手続きのルール化

日本経済新聞9月20日朝刊の社会面に「税務調査、増す説明責任」の記事が掲載されていました。

来年1月に税務調査の手続きを定めた改正国税通則法が施行され、これにより税務調査の事前通知や追徴課税の理由説明が原則義務化されます。

これまでの税務調査でも、事前通知が行われているケースが大部分(記事では8割以上とあります)でしたが、法律上の規定はなく、現場の裁量で行われてきました。このことについて、驚かれる方も多いと思います。

日本は憲法に「租税法律主義」を掲げています。租税法律主義とは、国家が国民の私有財産の一部を義務的・強制的に提供させるという側面があることから、その賦課や徴収の方法を法律という一定のルールの下に置こうとするものです。

税務調査といえば、申告と並んで極めて重要な税務イベントです。その手続きが法令で定められていなかったのは不思議なことでした。

この9月に国税庁のホームページに次の通達、FAQが公表されています。

「調査手続きの実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/index.htm

「税務調査手続きに関するFAQ(一般納税者向け)」
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/pdf/02.pdf

「税務調査手続きに関するFAQ(税理士向け)」
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/pdf/03.pdf

税務調査の内容はもちろんのこと、今後は税務調査の手続きがルールに則って行われているかについて、我々は注視していかなければなりません。

2012年9月17日:消費税免税点制度の改正(大規模事業者による法人設立)

小規模事業者に消費税の納税義務を免除する「免税点制度」をご存知ですか?

基準期間(法人の場合には2事業年度前の事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の場合には、消費税の納税義務を免除するという制度です。

この制度によって、消費者が負担する消費税相当額が事業者の手元に残る「益税」とされることがあります。納税義務が免除される事業者であっても、仕入れに消費税を負担しているので、丸々売上の5%を得しているわけではありません。

零細な事業者に消費税の納税義務を課することはないだろうとの考えで、現在は「基準期間の1,000万円」という線引きがなされています。

しかしこの「基準期間の1,000万円」というルールを逆手にとり、意図的に免税の恩恵を受けることができる場合があります。

たとえば、大企業グループなどは、新設法人であっても初年度から相当な売上が見込まれる場合がありますが、設立時の資本金を1,000万円未満にすると初年度は免税事業者に該当します。

このような問題が指摘される中で、本年8月10日に消費税増税が可決された法律の中で、大規模企業グループの免税点制度利用に一定の制限をするルールができました。

平成26年4月1日以後に設立される法人から,資本金の額が1,000万円未満であっても,基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円を超える法人が50%超出資して設立した法人である場合には,事業者免税点制度の適用がなくなることとなりました。

消費税が8%、10%と上がる中で、「益税」問題がどんどん解消されようとしています。国民感情的には健全な方向だと思いますが、一方でどんどん複雑な税制になってきています。

日本は租税法律主義です。複雑な税制の中で、税理士が企業に貢献できる機会はますます増えているように思います。

2012年9月9日:廃止なるか、自動車取得税

平成25年度税制改正に向けて、各省庁からの要望がまとまったと報道がされています。

先週コラムに書いた住宅ローン控除も目玉となりそうですが、ずいぶん前から話題になっているのが、自動車取得税・自動車重量税の廃止です。

自動車を購入する時に課税される自動車取得税については、消費税との二重課税が指摘されて、経済産業省から直ちに廃止との要望がされています。

自動車取得税・自動車重量税は、かつては道路財源として使われていましたが、平成21年度から、一般財源化されています。これは予算の硬直化や無駄遣いが指摘される中での変更でした。

すなわち、道路整備等の目的を根拠としていた自動車取得税等の課税根拠はなくなったとの指摘です。

いっそ目的税をやめたときに、自動車税等も廃止をすれば良かったのでしょうが、9千億円と言われる税制を廃止することは容易ではありません。

若者の車離れがよく言われていますが、税金を含めたコスト面の大きさも要因だと思います。車の税金を減らすことは、景気支えに重要な役割を発揮することでしょう。

車を買う時に、車を決め、オプションを決め、価格を交渉し、折り合って、購入を決意します。しかしプリントされた見積書を見て、税金を含めた総額とのギャップに目を丸くします。うーんやっぱりなあ、と購入をためらったことのある方も多いと思います。

税収も大きく容易ではないでしょうが、中途半端に税率を軽減するような改正にせずに、思い切って自動車取得税・自動車重量税の廃止に踏み切ってもらいたいものです。

2012年9月2日:住宅ローン減税拡充

9月1日の日本経済新聞に「住宅ローン減税拡充」の記事があります。

記事によると、減税期間は15年(現行10年)、控除率ローン残高の最大2%(現行1%)、対象となる年末ローン残高の上限は検討中ですが、最高減税額は1000万円になると報道されています。

8%への消費税増税が実施される2014(平成26)年からの減税です。

現在の住宅ローン金利は、有利なレートを出している金融機関ですと、変動金利で1%前後、10年固定でも1%台半ば、30年固定でも2%台のようです。

したがって実質的にほとんど金利負担がなく住宅ローンを組めると考えても良いかもしれません。

しかも、所得税で控除しきれなければ、差額を住宅エコポイントなどで給付する仕組みを検討しているようです。

消費税増税の駆け込み需要の反動を想定し、住宅ローン減税でバランスを取ろうということのようです。

住宅の本体価格に対する消費税が3%(5%→8%)上がり、住宅ローン控除が1%上がる場合、仮に「住宅本体価格=ローン金額」とすれば、3年+αで消費税増税分の元がとれる計算になります。

住宅ローン控除制度は、税制としてあって当たり前、拡大しているときに住宅を購入するとラッキー、たまたま縮小しているときに住宅を買うと残念でしたというイメージでした。

すなわち景気対策としては住宅ローン控除はマンネリ化していたと言えます。

しかし消費税増税で個人の住宅需要が冷え込んだ場合、景気に与える影響は大きいでしょう。住宅ローン控除を活用し、消費税増税時の景気悪化を防いでもらいたいものです。

税金の観点から、住宅購入のタイミングを税理士に相談してみることもお勧めします。

2012年8月26日:印紙税のあり方

8月24日の朝日新聞社会面に「その印紙、足りないかも」という見出しで、大手企業の印紙税の納付漏れの記事が載っていました。

一定金額を超えた領収書や、一定の契約書を作成した場合に、収入印紙を貼り付けて印鑑で消印をする必要があります。

印紙税の対象となる契約書などのことを「課税文書」と呼びます。個々の文書すべて記載内容が違いますので、ひとつひとつ内容を確認し、「課税文書」に該当するかを判断する必要があります。

記事にも書いてありますが、印紙税は専門家でもわかりにくい税金と言われています。

印紙税の調査をする税務職員は人数的に限られており、大きな企業であっても、印紙税の税務調査を受ける機会は限られています。私も印紙税の税務調査を受ける経験をしたことがありますが、正直な話、印紙税の調査を通して印紙税のことを深く理解できるようになりました。

印紙税の判断に関しては税務署側が情報をたくさん持っており、大手企業が受ける税務調査では、多額の納付漏れが指摘されることが多いようです。

この記事にも、大手銀行が日々の業務で使っている書式に、印紙税の貼り漏れがあったと書かれています。個々の文書で判断が分かれるためそういうことが起こりうるのです。

印紙税というのは、ヨーロッパでは17世紀に施行、日本でも1873年に施行されている、歴史のある税金です。

しかし紙で印刷して「課税文書」として作成しない限り印紙税の対象となりません。同じ内容であっても、電子メールやインターネット上だけの場合には、課税対象とならないことから、印紙税のあり方を見直すべきではないかとの意見もあるようです。

地味な税金ではありますが、数年分の納付漏れを指摘されると負担も大きくなります。企業も自社で作成する文書のチェックをしっかり行う必要があります。

皆さまの会社は大丈夫でしょうか?

2012年8月19日:誰が消費税を納税するのか?

8月10日に消費税の増税が参議院で可決されました。2014(平成26)年4月1日から8%、2015(平成27)年10月から10%となります。

セミナーなどで消費税について話す機会があると必ず私が問いかけるのは、「消費税の納税義務者は誰であるか?」ということです。

所得税であれば、事業者や給与所得者など「所得」を得た人が納税義務者です。

法人税であれば、株式会社などがその儲けから払う納税義務者となります。

固定資産税は、土地・家屋などの固定資産を持つ人が納税義務者となります。

では消費税は?

消費者は納税義務者ではありません。消費者にモノを売ったり、サービスを提供する事業者が、消費税の納税義務者となります。

したがって消費者はレジで消費税を払わなくても、「脱税」にはなりません。ただし消費税を払わなければ、商品を売ってもらえないでしょう。

事業者は国に消費税を納めるために、消費者からモノの対価の額に含めて「消費税相当額」を受け取っているにすぎません。

レジでもらうレジペーパーに、「内消費税xxx円」と書いてありますが、一件一件納税されているわけではありません。事業者が一年分の収入支出の記録(帳簿)を作成し、その帳簿に基づいて納税を行います。

国が「消費税を10%にしますよ」と決めたら事業者は大変なのです。消費税を正しく納税できるように、しっかりモノの対価としてお金を頂戴しなければなりません。これができないと、納税の資金繰りに困ってしまいます。

耳をすますと、近未来から「消費税の増税分、値引きしといてよ!」などという声が聞こえてきそうです。特に中小規模の事業者は、消費税増税分の値引き圧力がかかると経営に大きい影響が出ます。

消費税の増税の裏には、利益を削って消費税納税をしなければならない事業者の存在を忘れてはいけません。

納税義務者は事業者であるという重みを、消費者の立場として知っておくことは大切だと思います。

納税義務者である事業者は、消費税の増税が経営に直結する現実を理解し、日頃からの経理処理など万全にしておく必要があります。

消費税の増税を目の前にして、会社経営のために税理士のアドバイスが今こそ求められてきているのです。

2012年8月5日:相続の不安は何か?

8月5日の日本経済新聞の一面に、「相続に不安3人に1人」という記事が載っていました。日経生活モニターに登録した読者に調査をした結果です。

不安の理由としては、1位が「相続税の支払い」、2位が「配分を巡る争いが起きそう」、3位が「財産がどこにいくらあるか不明」とあります。

「税金」と「争族」の問題は、相続を語る上で避けられないテーマであることがわかります。しかし私が注目したいのは、「財産がどこにいくらあるか不明」という回答が多かったことです。

不動産や預貯金・株など、本人は把握していても、家族は案外わかっていない家は多いのではないでしょうか。同居している相続人がいない場合には、相続発生後に財産調査に困難を極めることもあるでしょう。

また同じ記事では、財産を継がせる立場にある人の回答で「遺言を書いている人」は16%にとどまっているとあります。遺言を書くつもりはないと答えた人の理由としては、「相続でもめるはずがない」という回答が44%と一番多かったとあります。

この調査をみると、親子間のコミュニケーションの難しさが伝わってきます。「もしも」があったときの相続財産のことが気になり、しかし親にはハッキリさせることができない子供世代。

子供たちが争うわけはないと信じたい一方で、そもそも財産がどれだけあるのかはっきりさせていない親世代。

そんなときは税理士に声をかけてみませんか?

財産の評価や税金の計算など、税理士の分野です。客観的に数値で把握し、それを家族で話合いをする基礎にして頂く。相続に関する家族間のコミュニケーションをサポートするのが税理士のひとつの役割であると思います。

日頃の家族円満が、いちばんの相続対策と言います。皆さま、家族のコミュニケーションを大切にしましょう。

2012年7月29日:たこ焼きは軽減税率?

2012年7月29日の産経新聞ニュースに「消費増税で、大阪名物たこ焼きがピンチ!?」という記事がありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120729-00000532-san-soci

衆議院で消費税の増税が可決され、食料品などの軽減税率に関心が高くなっています。しかしこのコラムでもこれまで何度も書いていますが、何を軽減税率として、何を標準税率とするかの線引きが非常に難しいです。

英国では食料品は0%税率ですが、調理したものは標準税率(20%)で課税がされると紹介されています。調理の基準として、温かいものは20%、温かくないものは0%とあります。

これを参考にすると、大阪のたこ焼きも温かいものなので、標準税率での課税対象になるのとの記事です。

カナダでは5個以下のドーナツはその場で食べられるから標準税率で課税、ドーナツ6個以上は食べきれないから持ち帰りの食品として非課税になると紹介されています。

軽減税率に反対というわけではありませんが、実務上は非常に混乱が予想されます。10%の税率であれば、まだ食料品などの軽減税率導入は早いのだろうと思います。

もし導入した場合を想定し軽減税率の対象は何にするかについて、大いに議論をしても良いのではないかと思います。税金に対する国民の関心が高くなるテーマだと思います。

たこ焼きが軽減税率だと、関東でもたこ焼きパーティーが増えるでしょうか?

2012年7月22日:法人税率の水準

アメリカの大統領選挙で法人税改革が議論となっているようです。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1803Z_Y2A710C1000000/

アメリカの税率が世界でも高くなっていることから、外国企業による対米投資意欲が削がれ、海外で利益を保持している米国企業が得をしていることが問題とされています。

日本では、昨年の税制改正のときに、グローバル社会で競争力のあるものにするために、法人税率の5%引き下げが行われています。

これにより法人の実効税率(事業税が税金計算上で損金となることを考慮した実質的な税率)は、2012年4月1日以降開始する事業年度より、35.64%(従前40.69%)に大きく下がりました。

ただし3年間は復興のために法人税の10%の復興特別税がかかりますので、当面は38%程度が実効税率となります。

財務省のHPによると、アメリカの実効税率が40.75%ですので、今の日本は確かにアメリカよりも低い税率となっています。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm


同HPによると、シンガポールは17%、韓国とイギリス24%、中国25%、ドイツ29.48%、フランス33.33%となっています。

国土が極端に狭く外資の誘致が国策であるシンガポールは別格として、先進諸国の中でも米国は高い水準にあります。

もし米国が大統領選挙後に、法人税率を下げることになると、また日本での税率下げの議論が出るかもしれません。

そのように世界の潮流で日本も法人税率を下げていくと、最後はどうなるのでしょうか。高率の消費税で国を支えていくことになるのでしょうか。

景気が上昇し企業の儲けが増えれば、低い税率でも高い税収を確保できることでしょう。やはり、しっかり景気回復に向かいたいものです。

2012年7月16日:消費税と住宅の駆け込み需要

本日(7月16日)の日本経済新聞に「住宅、駆け込み需要じわり」という記事が載っています。消費税の税率アップの前に、住宅を取得しようという動きが出ているようです。

住宅と言えば普通の人にとっては、一生に一度あるかないかのような買い物ですから、税率3%アップの影響は気になるところです。我が事務所のスタッフも考え始めているようです。

消費税率が平成26年(2014年)4月1日から8%に上がる見込みとなっています。同日以後の商品の販売などから新しい税率が適用されることになります。

住宅の場合であれば、住宅の引き渡しを受けた日です。引き渡しを受けた日とは、通常は、住宅の支払いを済ませ、家の鍵を受け取った日ということになります。

住宅の建築には長い時間がかかります。土地の購入から検討する方であれば、あっという間に一年くらい経過してしまいます。

戸建て住宅などは、平成26年4月1日前の駆け込み需要により工事が集中すると、3月31日までに引き渡しをすることが困難になる可能性があります。

それらの事情を鑑み、消費税法には「請負工事等に関する経過措置」が設けられる見込みです。平成25年9月30日までに請負工事等の契約を締結し、平成26年4月1日以降にその契約にかかる引き渡しがなされる場合には、消費税の税率は改正前の5%が適用されることになります。

しかし前回消費税が3%から5%になった平成7年のときには、「建物の譲渡を受ける者の注文に応じて建築される建物」を対象としており、経過措置が適用される住宅販売は限定されていました。今回も同様条件の経過措置となるかどうか注目する必要があります。

景気への悪影響を指摘される消費税増税です。せめて需要の先食い効果により、少しでも景気回復につながってもらいたいものです。

2012年7月8日:教育資金優遇税制

本日(2012年7月8日)の日本経済新聞3面に「教育費積み立て 優遇」の記事があります。

教育資金を積み立てる際に税制で優遇するというもので、積立期間中の利子や運用で得た利益を非課税にする案が有力とあります。早ければ2013年度の導入を目指すようです。

具体的には、孫や子供を受取人に指定した口座に対して、教育資金の積み立て目的である場合に限り、利子や運用益に対する課税を免除することになります。資金を引き出す際に、教育目的であることを証明する書類の提示などを求める案もあるようです。

現在の低金利時代では、教育資金の利子や運用益が非課税になっても大きなメリットになるとは思えませんが、祖父母の資金を若い世代に移転して有効活用を促すという狙いがあるようです。

さて、贈与税の非課税を規定する相続税法第21条の3に、次の条文があります。

「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」

祖父母と孫は一般的には扶養義務者相互間ではないと思いますが、教育費の贈与ということであれば、一般的には非課税とされているものと思います。

今回の「教育資金優遇税制」では、孫や子供を受取人に指定した口座で積み立てるということであれば、財産としては積立段階で孫や子供に贈与税が非課税で移転したと見ることができるのでしょうか?

もしそうであれば、低金利の時代においては、利子や運用益が非課税になるからというよりも、相続財産を減少させる効果があるのでこれを活用しようという動きになるのではないでしょうか。

記事によると親族が口座に拠出する際の所得控除なども検討しているとあります。相続財産が減少できた上に、所得控除もできるとなれば、大いに活用されそうですね。

まだ詳細は決まっていないので、上記はあくまで可能性にすぎませんが、この制度を今後も注目していきたいと思います。

2012年7月1日:海外ネット配信の消費税

6月29日(金)に安住財務大臣が記者会見を行い、海外から日本向けに配信する音楽や電子書籍などのサービスに、消費税を課税する方向で検討したと発表しました。2014年の消費税8%増税時点で課税を開始することを検討するようです。

消費税は、日本国内での取引に課税がされます。音楽や電子書籍などを配信する拠点が、日本国内にある場合には「国内取引」として課税がなされ、配信拠点が日本国外の場合には「国外取引」として課税がされません。

もしこれが「電子」ではなく「モノ」の世界であれば、「輸入取引」として輸入通関時に消費税が課税される仕組みになっていますが、電子配信の場合にはこれにも該当しません。

この検討を始める背景には、アマゾン・ドット・コムが日本での電子書籍販売を始めることや、楽天がカナダの会社を買収して電子書籍販売を始めることなどの伏線があります。

報道によると、国内への参入を決めた海外企業に事前登録を義務付ける「課税事業者登録制度」を検討するとあります。この方法はEUで導入実績があるようです。

「国内でがんばっている企業が損をしないように、公平を保つことが一つの論点になると思っています」と会見では大臣は語ります。

国内に拠点がない海外企業に日本での納税義務を徹底させることは容易なことではありません。いろいろ抜け道がありそうな制度になりそうですが、日本企業の海外流出を防ぐ一定の効果はあるものと思います。

どんな制度になるのか、今月(7月)からの研究会での検討に注目していきたいと思います。

2012年6月24日:消費税の増税に希望があるとするならば

日本の消費税を平成26年4月に8%、平成27年10月に10%に上げるということで、政局は混乱しています。

この10%という水準の意味合いを、諸外国の消費税(付加価値税)の税率の推移を見ながら考察してみましょう。添付は財務省のHPに公開されている図表です。

消費税率.gif

1970年前後に、ヨーロッパの主要国で導入されたときに、既に10%という税率で開始されました。少しづつ税率が上がり、20%前後になっている国が多いことがわかります。

一方、日本は20年ほど後の1989年に3%で導入。平成7年に5%に上がったのを最後に定着しています。

日本の財政赤字が大きいのは厳然たる事実です。歳出の半分を国債の発行で賄っているわけですから、増税論議は当然の話ということになります。しかも、諸外国に比べる限りにおいては、日本の消費税率はまだまだ低い水準です。

グローバル社会の中では、租税条約の締結なども通じ、税制も均一化してきています。大きな枠組みとしての税制は、他国とのバランスも視野に入れざるを得ない面があります。

誰でも税金が増えるのは嫌なものです。毎日の買い物の値段が高くなるのは、困ったものです。できれば消費税は今のままであって欲しいと思います。

では、消費税が10%になってしまったら暗黒の世界がやってくるのかといったら、そんなことでもないと思います。20%といった付加価値税の世界で、ヨーロッパの人々は生きているわけです。

日本でも消費税のなかった時代と比べ、現代において5%の消費税を払っても世の中は回っています。消費税が景気悪化の時代と重なっていますが、消費税こそが景気悪化の原因だと言う分析は、短期的にはあっても中長期的にはないのではないでしょうか。

もっとも消費税の増税については、中小企業者の税転嫁の問題や、低所得者の負担軽減など、解決すべき問題はたくさんあります。これは消費税が、経済的に中立的であるためにも不可避な課題です。

この増税をチャンスに変えることができる点があるとしたら、国民が「税」の意識を変えるきっかけになることではないかと思います。

10%になれば国民が買い物の都度、税の痛みを感ずることになります。これは国民の税へ関心が高くなるとともに、税金の使い道にも関心が高くなることを意味します。

欧米人は日本人よりはるかに税への関心を高く持っていると聞きます。日本人は、これまで「お上まかせ」で来ていましたが、震災や原発の問題を通して「お上にまかせてはおられない」という意識が芽生えてきたように思えます。

大法人による法人税や高所得者の所得税、サラリーマンの源泉税で社会が賄えていた時代は、国民の義務である「税」にも関心を高く持てないのかもしれません。

消費税という税を負担することによって、日本国民が、日本をどうしていこうか、どういったことにお金を使っていこうかということに関心を持てるようになれば、増税も意味を持つのではないでしょうか。ピンチがチャンスで、日本が力強くなるきっかけになって欲しいと思います。

楽観的に過ぎると言われるかもしれませんが、毎日の実りのない政局の報道に接していると、そういう希望を持たずにはいられません。

2012年6月17日:3党合意

消費増税に民主、自民、公明の3党が合意しました。今後も政局はいろいろ動きがあるでしょうが、2014年4月に8%、2015年10月に10%という消費税率になる道筋がつくこととなりました。

3党による「税関係協議結果」という資料が民主党などのホームページに掲載されています。

低所得者対策としては、「給付付き税額控除」の検討をすること、「複数税率の導入」の検討を行うとあります。また施策の実現までの暫定的な措置として「簡素な給付措置」を実施するとあります。

「簡素な給付措置」の内容は明記されていませんが、これを実施することが消費税率を8%に上げるための条件となっています。単なるバラマキにならないか、しっかり注目しなければなりません。

気になるのは、あまり報道されない所得税・資産税(相続税・贈与税)のゆくえです。

所得税は、これまでの社会保障と税一体改革の法案では、課税所得5,000万円超について、最高税率を45%にするとなっていました。今回の3党合意では、この政府案を一度削除して、「課税所得3,000万円超について45%、5,000万円超について50%」という案を踏まえて検討することになりました。

資産税については、社会保障と税一体改革の法案の該当部分を削除し、平成25年度税制改正で法制上の措置を決めるとあります。こちらは現在の政府案を踏まえて検討を進めるとあり、相続税の増税の方向性は同じものの、一層の増税がありうるのか、今後の議論に注目する必要があります。

「富裕層からは税金を頂きますし、低所得者には給付をしますので、消費税の増税にご理解ください。」というのが、税に関する3党合意の趣旨でしょう。多くの国民に増税を受け入れてもらうためには、このようなセットになるのはやむをえないのでしょうか?

政治的には長い間何も決まらずに来ましたが、これから具体的な議論になってくるので、実務的にはいよいよ目が離せません。このコラムでも税制改正について継続的に書いていきたいと思います。

2012年6月10日:マイナンバー制度

6月10日の日本経済新聞に「マイナンバーの意外なメリット」という解説記事が載っています。マイナンバーには経済効果が1兆円あると書いてあります。

マイナンバー制度は、いわゆる「国民総背番号制」のことであり、税金逃れさせないための制度というのが一般認識かもしれません。

当初、現在国会審議されている「社会保障と税一体改革」(以前は、税と社会保障一体改革と呼ばれていましたが。。。)の中でマイナンバー制度が組み込まれていました。現在は別の法案として切り離して審議がされています。この解説記事で私も知りました。

マイナンバー制度のメリットとしては次のような点があると言われています。

*年金や保険料、所得税にいくら払ったか等を一括で確認できる
*マイナンバーのカード1枚で年金手帳、健康保険証、介護保険証として使える
*高額な医療等を受けた場合、自己負担額を超える金額を一旦本人が支払う必要がなくなる
*年金記録問題のようなミスをなくす効果が期待できる
*低所得者を偽装した生活保護費の不正受給を防止する

一方デメリットとしては、個人情報の流出、システムの構築の費用が膨大と言った点などが言われています。

解説記事では、マイナンバーを医療分野に広げ検査や投薬の重複を減らすことや、公共料金や引っ越しの手続きをまとめてできるようにすることにより、8,500億円の経済効果があり、これに行政分野の経済効果として3,000億円という試算を紹介しています。

IT化の流れの中でマイナンバー制になじむ社会になっているのは間違いないものと思います。プライバシー問題には十分配慮しながら、マイナンバーを検討していくのは有効なのではないかと思いました。

そんな簡単なことじゃないよ、とお叱りも受けそうですが。

みなさんはどう考えますか?

2012年6月3日:中小企業の消費税転嫁

この税金コラムでも何度か書いていますが、消費税の増税をしたときの最大の問題点として、取引上の立場が弱い中小企業が、価格に消費税分を上乗せすることができず、税金を中小企業が負担をすることになるという点があります。

政府はこの消費税転嫁問題に対応するための検討を始めました。5月31日の日本経済新聞の3面に「消費増税分、横並び値上げ容認へ」という記事が掲載されていました。

具体的には、各中小企業の業界団体が団体の参加企業に価格への上乗せを決めて守らせることを容認する(カルテルの容認)をしようという話です。

しかし、この「カルテルの容認」で中小企業の価格転嫁への課題を解決しましたということになるのでしょうか。業界で一律サービスを提供し、ある程度価格が決まっているような場合には、多少実行性があるのでしょうが、むしろそれは稀なケースではないでしょうか。

一般消費者向けは、むしろ価格転嫁がしやすいですが、業者間の取引となると「力関係」が反映されます。技術力など強みがある中小企業は限られていますので、消費税の増税にあたり下請け業者が厳しい状況になることは容易に想像できます。

力関係が反映する業者間の取引こそ、具体的な方策が欲しいところですが、容易ではなさそうです。

この日本経済新聞の見出しも誤解を招きそうで、あたかも便乗値上げを認めるように読めます。こういったところから変えていかないと適切な転嫁が進まないのではないでしょうか。

ギリギリのところで経営している会社が、売上の5%増税分を自己負担するようなことにならないように、しっかりとした対策を準備してもらいたいものです。

2012年5月27日:老人ホームの入居と小規模宅地の特例

相続税の計算に「小規模宅地等の特例」というルールがあります。

例えば、被相続人が亡くなる直前に居住していた建物の敷地を、自分の家を持っていない息子が相続する場合などに、240uまでの部分の評価額を8割減額して相続税の計算対象となります。

この適用を受けるためには、被相続人が亡くなる直前に居住していることが要件となります。しかし病院に入院していたり、老人ホームに入居していた場合には、亡くなる直前に居住していないことから、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができないのでしょうか。

入院のケースでは、病院は住むところではありませんし、治療が終了しだい自宅に戻ることが前提となります。いつでも退院して自宅に戻ることができる状態であると思います。したがって、入院の場合には「小規模宅地の特例」の対象となってきます。

老人ホームはどうでしょう。老人ホームの中でも、特別養護老人ホームでは、心身の必要性から必要な介護を受けるために強制的に入居する面があります。この場合には、入院と同じ取扱いになるものと考えられます。

しかしながら終身利用権を取得して入居するタイプの老人ホームの場合には、入院のように一時的に自宅を離れているものとは言えず、引っ越しをしたものと扱われることになります。この場合には、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができません。

ひとり暮らしの親が老人ホームへの入居を検討する際には、将来の相続税の心配もしておかなければなりません。「小規模宅地等の特例」の適用があるから大丈夫!と安心していてはいけないのです。

2012年5月20日:税金がいばる

先週のコラムで消費税の軽減税率について書きましたが、その後も軽減税率の議論が盛んです。

本日(5月20日)の朝日新聞の社説でも「軽減税率は将来の課題に」と論じられています。

その社説では、食料品の線引きの難しさとして他国の例が紹介されています。

「チョコレートはカカオの含有率が50%以上か未満か」(仏)、「ハンバーガーは店内で食べるか持ち帰りか」(独)、「ドーナツは5個以下か6個以上か」(加)という線引きで、いずれも前者が標準税率、後者が軽減税率であるとのことです。

またEUの付加価値税を単純平均すると標準税率が20%、食料品への軽減税率が11%ということも紹介されています。

もちろん他国が消費税を導入しているから日本でも同様にすべきだということにならないのと同様に、他国の標準税率と軽減税率をマネする必要もありません。

しかし消費税導入の目的は税収確保なわけですから、軽減税率で税収があまり伸びないことになると、消費税増税で混乱するだけで意味がありません。

また食料品の定義付けで混乱すると、例えばドーナツを一度に6個以上買わなくなったり、並び直して2回にわけて買うみたいな、日常生活で「税金がいばる」ことになる恐れがあります。こんなことは嫌ですね。

それにしても、新聞報道では「消費増税は避けられない」ということが前提で「決められない政治が問題」という論調が多く見かけられます。政局も消費税がらみのことばかりです。

残念ですが、気がつくと、もうずいぶんと「税金がいばる」状況になってしまっているようです。税理士としては、税法をかみ砕いて説明をし、お客様に助言をする場面が増えてくるのではないかと思っています。

2012年5月13日:消費税の軽減税率

消費税議論に先が見えない状況が続いています。いろいろな政治的駆け引きが行われている中で、本日の報道にあったのは軽減税率の導入です。自民党に軽減税率の導入の案があることに前原政調会長が「考慮に値する」と語ったそうです。

軽減税率とは消費税導入当初からある議論です。例えば食料品や日用品は非課税もしくは税率を軽減しようというものです。

しかし食料品の税率を低くすると決めた場合に、何が食料品となるかの定義が必要です。これは簡単なことではありません。

米や野菜、肉、魚などが食料品であることに異論はありません。でもハムや缶詰など加工食品はどうなるでしょうか。お酒やビール、ワインはどうしましょうか?お歳暮などの贈答用として買う場合にはどうなりますか?

外食はどうなりますか?ハンバーガーや牛丼屋やファミリーレストランはどうでしょうか。お店で食べずにテイクアウトすれば食料品でしょうか。

消費税導入前にあった物品税の時代には、物品税を課税されるリストがありました。消費税は物品税のような課税リストに載せる、載せないということを決めるときの政治的束縛から解放されて、広く課税を行う「一般消費税」として導入されたものです。これが消費税のもつ大きな特徴です。

事業者の消費税申告を行う税理士としても、税務調査での揉め事を増やすような複雑な税制は希望しません。

消費税増税にあたり納税者の負担軽減を図ろうというのであれば、コスト(=新たな仕事)を増やさない方法によってもらいたいと思います。

もっともその前に消費税を本当に増税するのかどうかという根本議論を国会でしっかりやって欲しいと思いますが。

2012年5月6日:相続税の連帯納付義務

相続税は、自分が払うべき相続税の納付義務に加えて、他の相続人の相続税についても連帯納付義務を負うことをご存知でしょうか?

例えば、2人の兄弟が親の相続財産について相続税を支払う場合、長男が自分の相続税をきちんと払っていても、次男が相続税を払えず滞納している場合には、長男が相続税の納税を求められる可能性があります。

次男が相続財産を取得しても、税金を払わずに相続財産を使ってしまったり、次男自身の借金の返済に充ててしまい、相続税を払えない状況にあるときには、税務署は長男に対して相続税の支払いを通知することができます。

かねてから税理士から問題視されているこのルールですが、平成24年の税制改正で次のいずれかの場合に連帯納付義務が解除されることになりました。

@ 相続税の申告期限等から5年経過しても,連帯納付義務者に納付通知書が発せられていない場合
A 納税義務者が納税猶予又は延納を受けた場合

実際には延滞者がいる場合に、5年間も納付通知書を発しないことはありえないでしょうから実務的には@のケースはないと考えられます。納税猶予はまだまだ広く活用されておらず、また十分に納税できる相続財産を取得している場合には、通常は延納の適用を受けることはできません。

平成24年改正で連帯納付義務が緩和されたと言われていますが、実質的にはあまり緩和されたとは言えないのではないでしょうか。

連帯納付義務は国が税金をとりやすくする趣旨だけのものです。速やかに現代の家族制度の実態にあった税制に改正をしてもらいたいものです。

2012年4月22日:95%ルールと課税期間の短縮

このコラムでもこれまで何度か書いていますが、平成24年4月1日以降開始する課税期間から、課税期間の売上が5億円を超える事業者は、いわゆる95%ルールの適用がなくなっています。

すなわち一括比例配分方式か、個別対応方式のいずれかによって、仕入税額控除の計算をする必要があります。

この5億円の判定にあたり、課税期間の短縮をしている事業者(たとえば3カ月)の場合に、どのように判定をするかについて、消費税の基本通達に新たに規定が設けられました。

これによると年換算をして5億円を超えるかどうかで判定することになりました。

たとえば、3カ月の短縮の場合、その期間の課税売上が1億2千万円であれば年換算で4倍すると4億8千万円ですので、課税売上割合が95%以上であれば、全額仕入税額控除ができます。1億3千万円であれば5億2千万円ですので、全額控除はできません。

さて課税売上が年5億円を超える事業者であっても、季節変動の影響を受ける事業者であれば、課税期間の短縮を受けておけば、95%ルールの恩恵を受けることができる期間があるかもしれない、と考えてしまいます。

仕入や費用の発生時期と売上の発生時期がずれると、意外と大きな影響があるかもしれませんね。

申告の面倒さはありますが、検討する価値のある会社は多いのではないでしょうか。

2012年4月15日:税金の書籍

どこの税理士事務所でもたくさんの専門書を購入しそれらを業務に活用しています。税法は毎年変わるので、最新の書籍を揃えるだけでもなかなかの投資額になります。

 

現在に至るまで、多くの税金の専門書籍のうち「権威のあるもの」は現役の国税職員が書いています。だいだいの国税職員が「休日を利用して」「個人的な立場」で書いている本ですが、税務調査のときに調査官がコピーを持ってくるときもあるくらい、現場で標準となっているものもあります。

 

またその道の権威の実務家が書いたり、大手税理士法人のブランド力・ノウハウ収集力を持って出版される書籍もあります。かつて在籍した税理士法人で私が一部書いたものもあります。これらの本も、専門家の間では重宝されています。

 

「舟を編む」という本がベストセラーになっており、辞書の編纂の苦労を描かれています。主人公が言葉のひとつひとつを掘り下げる場面などもあります。

 

税理士もこれまでは、「どの法律・通達にこう書いてある」から発展し、「どの質疑応答集・コンメンタール(逐条条文解説)でこう書いてある」「その新版ではこのような記述が追加された」ということを知っていることが、専門家のひとつの権威でもありました。

 

もちろんこれらは今でも重要ではありますが、やはり税理士もインターネットをいかに活用しているかが問われる状況になっていると思います。たとえば国税庁のHPに掲載されている「質疑応答事例」などは非常に充実しており、定期的に事例が追加掲載されます。

 

税務通信などの専門誌も、索引を調べて、バックナンバーから近い内容の記事を探していました。現在はWEBで購入し、記事検索で一発でたどりつくという形で活用しています。我々の事務所が契約しているTKCのデータベースも充実しています。

 

インターネットで情報が提供される時代では、専門家と一般の方の垣根が低くなっています。自分の財産を守るために、驚くほど勉強している方にもお会いすることがあります。

 

お客様の役にたてるように、勉強を続け、情報への投資も継続をしていく必要があると、ベストセラーを読みながら思いました。

2012年4月8日:源泉税の復興増税

個人所得税について平成25年から25年間、復興増税として所得税額の2.1%が追加で課税されることになります。これは申告所得税だけでなく、源泉所得税も対象となります。

 

源泉所得税が対象と聞くと「給与の源泉が高くなるんだな」という認識だと思います。

 

しかし給与だけではなく、預貯金の利子、配当、弁護士や税理士などの報酬、特定口座の上場株式の譲渡所得などの源泉税全てについて、2.1%上積みとなります。

 

預貯金の利子など分離課税のものはもちろんのこと、確定申告での精算が前提の報酬も対象となります

 

たとえば、法人など源泉徴収義務のある者が、税理士や弁護士などの専門家に報酬を支払うときは、これまで10%の所得税を源泉徴収していたのが、10.21%で源泉徴収することになります。

 

また手取りが丸い金額になるように、例えば現在1万円払うために11,111円の総額報酬から1,111円の源泉徴収をしているものは、11,137円の総額から1,137円の源泉徴収をして支払うことになります。

 

計算ややこしそうですね。こういった計算を25年間、日本中でやるというのが、なんとも辛い気分になります。

 

法人が受け取る預貯金の利子や配当も、法人税の申告で控除をとる場合には細かい計算になってしまいます。これも25年間です。

 

早期に復興して、復興債を償還し、復興増税を前倒しで終了したいものですね。がんばりましょう。

 

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