消費増税に民主、自民、公明の3党が合意しました。今後も政局はいろいろ動きがあるでしょうが、2014年4月に8%、2015年10月に10%という消費税率になる道筋がつくこととなりました。

3党による「税関係協議結果」という資料が民主党などのホームページに掲載されています。

低所得者対策としては、「給付付き税額控除」の検討をすること、「複数税率の導入」の検討を行うとあります。また施策の実現までの暫定的な措置として「簡素な給付措置」を実施するとあります。

「簡素な給付措置」の内容は明記されていませんが、これを実施することが消費税率を8%に上げるための条件となっています。単なるバラマキにならないか、しっかり注目しなければなりません。

気になるのは、あまり報道されない所得税・資産税(相続税・贈与税)のゆくえです。

所得税は、これまでの社会保障と税一体改革の法案では、課税所得5,000万円超について、最高税率を45%にするとなっていました。今回の3党合意では、この政府案を一度削除して、「課税所得3,000万円超について45%、5,000万円超について50%」という案を踏まえて検討することになりました。

資産税については、社会保障と税一体改革の法案の該当部分を削除し、平成25年度税制改正で法制上の措置を決めるとあります。こちらは現在の政府案を踏まえて検討を進めるとあり、相続税の増税の方向性は同じものの、一層の増税がありうるのか、今後の議論に注目する必要があります。

「富裕層からは税金を頂きますし、低所得者には給付をしますので、消費税の増税にご理解ください。」というのが、税に関する3党合意の趣旨でしょう。多くの国民に増税を受け入れてもらうためには、このようなセットになるのはやむをえないのでしょうか?

政治的には長い間何も決まらずに来ましたが、これから具体的な議論になってくるので、実務的にはいよいよ目が離せません。このコラムでも税制改正について継続的に書いていきたいと思います。

6月10日の日本経済新聞に「マイナンバーの意外なメリット」という解説記事が載っています。マイナンバーには経済効果が1兆円あると書いてあります。

マイナンバー制度は、いわゆる「国民総背番号制」のことであり、税金逃れさせないための制度というのが一般認識かもしれません。

当初、現在国会審議されている「社会保障と税一体改革」(以前は、税と社会保障一体改革と呼ばれていましたが。。。)の中でマイナンバー制度が組み込まれていました。現在は別の法案として切り離して審議がされています。この解説記事で私も知りました。

マイナンバー制度のメリットとしては次のような点があると言われています。

*年金や保険料、所得税にいくら払ったか等を一括で確認できる
*マイナンバーのカード1枚で年金手帳、健康保険証、介護保険証として使える
*高額な医療等を受けた場合、自己負担額を超える金額を一旦本人が支払う必要がなくなる
*年金記録問題のようなミスをなくす効果が期待できる
*低所得者を偽装した生活保護費の不正受給を防止する

一方デメリットとしては、個人情報の流出、システムの構築の費用が膨大と言った点などが言われています。

解説記事では、マイナンバーを医療分野に広げ検査や投薬の重複を減らすことや、公共料金や引っ越しの手続きをまとめてできるようにすることにより、8,500億円の経済効果があり、これに行政分野の経済効果として3,000億円という試算を紹介しています。

IT化の流れの中でマイナンバー制になじむ社会になっているのは間違いないものと思います。プライバシー問題には十分配慮しながら、マイナンバーを検討していくのは有効なのではないかと思いました。

そんな簡単なことじゃないよ、とお叱りも受けそうですが。

みなさんはどう考えますか?

この税金コラムでも何度か書いていますが、消費税の増税をしたときの最大の問題点として、取引上の立場が弱い中小企業が、価格に消費税分を上乗せすることができず、税金を中小企業が負担をすることになるという点があります。

政府はこの消費税転嫁問題に対応するための検討を始めました。5月31日の日本経済新聞の3面に「消費増税分、横並び値上げ容認へ」という記事が掲載されていました。

具体的には、各中小企業の業界団体が団体の参加企業に価格への上乗せを決めて守らせることを容認する(カルテルの容認)をしようという話です。

しかし、この「カルテルの容認」で中小企業の価格転嫁への課題を解決しましたということになるのでしょうか。業界で一律サービスを提供し、ある程度価格が決まっているような場合には、多少実行性があるのでしょうが、むしろそれは稀なケースではないでしょうか。

一般消費者向けは、むしろ価格転嫁がしやすいですが、業者間の取引となると「力関係」が反映されます。技術力など強みがある中小企業は限られていますので、消費税の増税にあたり下請け業者が厳しい状況になることは容易に想像できます。

力関係が反映する業者間の取引こそ、具体的な方策が欲しいところですが、容易ではなさそうです。

この日本経済新聞の見出しも誤解を招きそうで、あたかも便乗値上げを認めるように読めます。こういったところから変えていかないと適切な転嫁が進まないのではないでしょうか。

ギリギリのところで経営している会社が、売上の5%増税分を自己負担するようなことにならないように、しっかりとした対策を準備してもらいたいものです。


相続税の計算に「小規模宅地等の特例」というルールがあります。

例えば、被相続人が亡くなる直前に居住していた建物の敷地を、自分の家を持っていない息子が相続する場合などに、240㎡までの部分の評価額を8割減額して相続税の計算対象となります。

この適用を受けるためには、被相続人が亡くなる直前に居住していることが要件となります。しかし病院に入院していたり、老人ホームに入居していた場合には、亡くなる直前に居住していないことから、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができないのでしょうか。

入院のケースでは、病院は住むところではありませんし、治療が終了しだい自宅に戻ることが前提となります。いつでも退院して自宅に戻ることができる状態であると思います。したがって、入院の場合には「小規模宅地の特例」の対象となってきます。

老人ホームはどうでしょう。老人ホームの中でも、特別養護老人ホームでは、心身の必要性から必要な介護を受けるために強制的に入居する面があります。この場合には、入院と同じ取扱いになるものと考えられます。

しかしながら終身利用権を取得して入居するタイプの老人ホームの場合には、入院のように一時的に自宅を離れているものとは言えず、引っ越しをしたものと扱われることになります。この場合には、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができません。

ひとり暮らしの親が老人ホームへの入居を検討する際には、将来の相続税の心配もしておかなければなりません。「小規模宅地等の特例」の適用があるから大丈夫!と安心していてはいけないのです。


先週のコラムで消費税の軽減税率について書きましたが、その後も軽減税率の議論が盛んです。

本日(5月20日)の朝日新聞の社説でも「軽減税率は将来の課題に」と論じられています。

その社説では、食料品の線引きの難しさとして他国の例が紹介されています。

「チョコレートはカカオの含有率が50%以上か未満か」(仏)、「ハンバーガーは店内で食べるか持ち帰りか」(独)、「ドーナツは5個以下か6個以上か」(加)という線引きで、いずれも前者が標準税率、後者が軽減税率であるとのことです。

またEUの付加価値税を単純平均すると標準税率が20%、食料品への軽減税率が11%ということも紹介されています。

もちろん他国が消費税を導入しているから日本でも同様にすべきだということにならないのと同様に、他国の標準税率と軽減税率をマネする必要もありません。

しかし消費税導入の目的は税収確保なわけですから、軽減税率で税収があまり伸びないことになると、消費税増税で混乱するだけで意味がありません。

また食料品の定義付けで混乱すると、例えばドーナツを一度に6個以上買わなくなったり、並び直して2回にわけて買うみたいな、日常生活で「税金がいばる」ことになる恐れがあります。こんなことは嫌ですね。

それにしても、新聞報道では「消費増税は避けられない」ということが前提で「決められない政治が問題」という論調が多く見かけられます。政局も消費税がらみのことばかりです。

残念ですが、気がつくと、もうずいぶんと「税金がいばる」状況になってしまっているようです。税理士としては、税法をかみ砕いて説明をし、お客様に助言をする場面が増えてくるのではないかと思っています。


消費税議論に先が見えない状況が続いています。いろいろな政治的駆け引きが行われている中で、本日の報道にあったのは軽減税率の導入です。自民党に軽減税率の導入の案があることに前原政調会長が「考慮に値する」と語ったそうです。

軽減税率とは消費税導入当初からある議論です。例えば食料品や日用品は非課税もしくは税率を軽減しようというものです。

しかし食料品の税率を低くすると決めた場合に、何が食料品となるかの定義が必要です。これは簡単なことではありません。

米や野菜、肉、魚などが食料品であることに異論はありません。でもハムや缶詰など加工食品はどうなるでしょうか。お酒やビール、ワインはどうしましょうか?お歳暮などの贈答用として買う場合にはどうなりますか?

外食はどうなりますか?ハンバーガーや牛丼屋やファミリーレストランはどうでしょうか。お店で食べずにテイクアウトすれば食料品でしょうか。

消費税導入前にあった物品税の時代には、物品税を課税されるリストがありました。消費税は物品税のような課税リストに載せる、載せないということを決めるときの政治的束縛から解放されて、広く課税を行う「一般消費税」として導入されたものです。これが消費税のもつ大きな特徴です。

事業者の消費税申告を行う税理士としても、税務調査での揉め事を増やすような複雑な税制は希望しません。

消費税増税にあたり納税者の負担軽減を図ろうというのであれば、コスト(=新たな仕事)を増やさない方法によってもらいたいと思います。

もっともその前に消費税を本当に増税するのかどうかという根本議論を国会でしっかりやって欲しいと思いますが。

相続税は、自分が払うべき相続税の納付義務に加えて、他の相続人の相続税についても連帯納付義務を負うことをご存知でしょうか?

例えば、2人の兄弟が親の相続財産について相続税を支払う場合、長男が自分の相続税をきちんと払っていても、次男が相続税を払えず滞納している場合には、長男が相続税の納税を求められる可能性があります。

次男が相続財産を取得しても、税金を払わずに相続財産を使ってしまったり、次男自身の借金の返済に充ててしまい、相続税を払えない状況にあるときには、税務署は長男に対して相続税の支払いを通知することができます。

かねてから税理士から問題視されているこのルールですが、平成24年の税制改正で次のいずれかの場合に連帯納付義務が解除されることになりました。

① 相続税の申告期限等から5年経過しても,連帯納付義務者に納付通知書が発せられていない場合
② 納税義務者が納税猶予又は延納を受けた場合

実際には延滞者がいる場合に、5年間も納付通知書を発しないことはありえないでしょうから実務的には①のケースはないと考えられます。納税猶予はまだまだ広く活用されておらず、また十分に納税できる相続財産を取得している場合には、通常は延納の適用を受けることはできません。

平成24年改正で連帯納付義務が緩和されたと言われていますが、実質的にはあまり緩和されたとは言えないのではないでしょうか。

連帯納付義務は国が税金をとりやすくする趣旨だけのものです。速やかに現代の家族制度の実態にあった税制に改正をしてもらいたいものです。

このコラムでもこれまで何度か書いていますが、平成24年4月1日以降開始する課税期間から、課税期間の売上が5億円を超える事業者は、いわゆる95%ルールの適用がなくなっています。

すなわち一括比例配分方式か、個別対応方式のいずれかによって、仕入税額控除の計算をする必要があります。

この5億円の判定にあたり、課税期間の短縮をしている事業者(たとえば3カ月)の場合に、どのように判定をするかについて、消費税の基本通達に新たに規定が設けられました。

これによると年換算をして5億円を超えるかどうかで判定することになりました。

たとえば、3カ月の短縮の場合、その期間の課税売上が1億2千万円であれば年換算で4倍すると4億8千万円ですので、課税売上割合が95%以上であれば、全額仕入税額控除ができます。1億3千万円であれば5億2千万円ですので、全額控除はできません。

さて課税売上が年5億円を超える事業者であっても、季節変動の影響を受ける事業者であれば、課税期間の短縮を受けておけば、95%ルールの恩恵を受けることができる期間があるかもしれない、と考えてしまいます。

仕入や費用の発生時期と売上の発生時期がずれると、意外と大きな影響があるかもしれませんね。

申告の面倒さはありますが、検討する価値のある会社は多いのではないでしょうか。

どこの税理士事務所でもたくさんの専門書を購入しそれらを業務に活用しています。税法は毎年変わるので、最新の書籍を揃えるだけでもなかなかの投資額になります。

現在に至るまで、多くの税金の専門書籍のうち「権威のあるもの」は現役の国税職員が書いています。だいだいの国税職員が「休日を利用して」「個人的な立場」で書いている本ですが、税務調査のときに調査官がコピーを持ってくるときもあるくらい、現場で標準となっているものもあります。

またその道の権威の実務家が書いたり、大手税理士法人のブランド力・ノウハウ収集力を持って出版される書籍もあります。かつて在籍した税理士法人で私が一部書いたものもあります。これらの本も、専門家の間では重宝されています。

「舟を編む」という本がベストセラーになっており、辞書の編纂の苦労を描かれています。主人公が言葉のひとつひとつを掘り下げる場面などもあります。

税理士もこれまでは、「どの法律・通達にこう書いてある」から発展し、「どの質疑応答集・コンメンタール(逐条条文解説)でこう書いてある」「その新版ではこのような記述が追加された」ということを知っていることが、専門家のひとつの権威でもありました。

もちろんこれらは今でも重要ではありますが、やはり税理士もインターネットをいかに活用しているかが問われる状況になっていると思います。たとえば国税庁のHPに掲載されている「質疑応答事例」などは非常に充実しており、定期的に事例が追加掲載されます。

税務通信などの専門誌も、索引を調べて、バックナンバーから近い内容の記事を探していました。現在はWEBで購入し、記事検索で一発でたどりつくという形で活用しています。我々の事務所が契約しているTKCのデータベースも充実しています。

インターネットで情報が提供される時代では、専門家と一般の方の垣根が低くなっています。自分の財産を守るために、驚くほど勉強している方にもお会いすることがあります。

お客様の役にたてるように、勉強を続け、情報への投資も継続をしていく必要があると、ベストセラーを読みながら思いました。

個人所得税について平成25年から25年間、復興増税として所得税額の2.1%が追加で課税されることになります。これは申告所得税だけでなく、源泉所得税も対象となります。

源泉所得税が対象と聞くと「給与の源泉が高くなるんだな」という認識だと思います。

しかし給与だけではなく、預貯金の利子、配当、弁護士や税理士などの報酬、特定口座の上場株式の譲渡所得などの源泉税全てについて、2.1%上積みとなります。

預貯金の利子など分離課税のものはもちろんのこと、確定申告での精算が前提の報酬も対象となります

たとえば、法人など源泉徴収義務のある者が、税理士や弁護士などの専門家に報酬を支払うときは、これまで10%の所得税を源泉徴収していたのが、10.21%で源泉徴収することになります。

また手取りが丸い金額になるように、例えば現在1万円払うために11,111円の総額報酬から1,111円の源泉徴収をしているものは、11,137円の総額から1,137円の源泉徴収をして支払うことになります。

計算ややこしそうですね。こういった計算を25年間、日本中でやるというのが、なんとも辛い気分になります。

法人が受け取る預貯金の利子や配当も、法人税の申告で控除をとる場合には細かい計算になってしまいます。これも25年間です。

早期に復興して、復興債を償還し、復興増税を前倒しで終了したいものですね。がんばりましょう。

政府は3月30日に消費税関連法案を閣議決定し、同日国会に提出しました。これまでの与党内での混乱は報道されている通りです。

これまで「社会保障・税の一体改革」について、このコラムで何度も書いていた通り、この法案は消費税の増税だけでなく、相続税や所得税の増税、共通番号制(納税者番号制)の導入も含まれています。

この点これまであまりマスコミも報道をしてきませんでしたが、ようやくクローズアップされてきました。

所得の低い人ほど税負担率が大きくなることを逆進性が高くなるといいます。消費税は高所得者、低所得者でも一律に課税がされることから、消費税の増税が行われると逆進性が高くなると言われています。

この逆進性が高まる消費税の増税への理解を得るために、「持てる者」から「持たざる者」へ、所得再分配機能を高めるために、所得税や相続税を増税すると説明がされています。

すなわち「持てる人」は、お金を貯蓄や投資にたくさん回すことができ、相対的に消費税負担も低く済みます。ますます資産格差が広がらないように、所得税や相続税を上げましょうというものです。

ただし相続税の増税は基礎控除を縮小するものなので、課税対象者を増やす改正です。これは所得再分配機能を高めるという説明とは必ずしもつながらないと思います。

所得、資産、消費を通じて、どのようなバランスで税収を確保するかは、国家の根本的な問題であり、おおいに国会で議論して頂きたいものです。

これに加えて「共通番号制」(いわゆる納税者番号制)には大いに注目をしていきたいと思います。この制度導入によって所得を捕捉していくことは、納税者間の不公平感をなくしていく道であろうと思います。国会でのこの議論も注目していきたいと思います。

平成24年3月25日現在、消費税の増税関連法案について今月中の国会提出が不明な状況です。

消費税が10%になったときには、いろいろ問題が出ることが予測されますが、中小企業の消費税の納税も問題のひとつではないかと考えます。

消費税は、適正に転嫁されるならば、取引の都度、売上の相手先から消費税相当額を受け取ることになります。この受け取った消費税相当額をきちんと納税する必要があるわけですが、このための管理が、小規模企業にとってハードルが高いことが多いです。

頭ではわかっていても、売上で入金された金額が一旦、会社の預金口座に入ると、全て会社の経営に投じられることになってしまいます。目下必要な、従業員の給与や仕入先への支払いの資金に回されてしまうと、消費税の納税が困難になります。

初めて消費税の納税義務者になった時などは、きちんと納税準備をしておかないと、納税資金に困ることになります。

定期積金を行うなど、別預金で管理をすることで、通常の会社の資金繰りと切り離す方法をとっている会社も多くあります。

消費税が5%ならばまだ何とか、納税資金もひねりだせるかもしれませんが、10%ともなると困難になるでしょう。

通帳の残高だけ見て経営をしていると、10%時代の消費税の納税資金には足りないということになってしまいます。経営者は月次決算を行い、月次決算書を見て、お金の使い方、使わずにとっておくべきかを考えていく必要があります。

そのためのお手伝いをするのが、税理士事務所の大切な仕事です。消費税大増税時代に突入する前に、準備を整えておきましょう。

職を見つけること自体が厳しい時代ですので前ほど言われなくなったように思いますが、高度成長期のころなど、「サラリーマンは必要が認められていないので個人事業者と比べて不利だ」みたいなことを言われていました。重税感を表現するのに、クロヨンという言葉が使われていました。

サラリーマンは仕事に使うスーツだって、靴だって自分の給料で払っているのに、経費として認めてもらっていない、これは納得がいかないという意見です。

しかし、知っている方は知っている通り、必要経費は基本認められていませんが、サラリーマンにも「給与所得控除」という控除があります。

年間給与の額によって決まってくる給与所得控除ですが、給与の金額に応じて、給与の40%〜5%までの金額を控除することができます。

会社が所得税を源泉徴収してくれていると、この給与所得控除というものの「ありがたさ」がわかりにくいのですが、個人事業者の確定申告を作っていると、給与所得控除の「ありがたさ」がよくわかります。

必要経費というのは、所詮使ってしまったお金です。一方で、給与所得控除は、「概算控除」のようなもので、実際にはスーツも靴も買い替えずにがんばれば、お金が手元に残っているにも拘わらず、所得からの控除が認められます。

私も税理士として自分自身の確定申告を行ったときに、サラリーマン時代に享受していた給与所得控除の「ありがたさ」がよくわかりました。

一方でこの「実際の支出が伴わないのに控除ができる仕組み」を享受するために、個人事業者が法人成りをすることがあります。いくら所得が高い人でも必ず5%の控除が認められています。青天井です。

これを改正して、給与所得が1,500万円を超える場合には、給与所得控除を245万円までしか認めない、という改正が平成24年税制改正で行われます。今月の国会で通れば、平成25年から適用されます。

そもそも給与所得控除は概算経費の性格を持っているということであれば、青天井である必然性はないということなのかもしれません。

しかし、クロヨンと言われサラリーマンの重税感が叫ばれた時代と異なり、今後は安定したサラリーマンに概算経費を認められるなんてけしからん、と言われる時代が来るのではないでしょうか。

とは言え、財務官僚自身、政治家自身の身にふりかかる給与所得控除の制限がこれ以上拡大することはないのかもしれません。ならばこの厳しい時代、個人事業者の税制に恩典を与えても良いのではないでしょうか。

たとえば、複式簿記の帳簿を「適時」に作成している事業者には、青色申告控除額を拡大するなどです。1年間の帳簿をまとめて作っている事業者と、日々こつこつ帳簿付けをしている事業者と同じ65万円の控除ではさびしいと思います。なんたって給与所得控除は、何もしなくても最低65万円からスタートするのですから。

みなさまどう思いますか?

(2012年3月11日の調布の税理士西山のブログから転載しています)

昨年3月11日は、ひとり事務所で確定申告書を作成しているときに地震が発生しました。

家族の無事が確認でき、電車が止まっていたため、その日は事務所の床の上で寝ました。

インターネットでNHKニュースを流しっぱなしにしていました。世界がぶっ壊れてしまうんじゃないかと、不安に思い、一夜を明かしました。

東北だけではない、翌朝の長野県北部の地震のニュースに驚きながら、始発電車で帰宅しました。

電車は多摩川を渡ります。まだうす暗い中、富士山が見えました。

思わず私はTwitterでつぶやきました。

「今、始発で帰宅中。富士山が見えました。悠然としています。」

電車を降りて、帰宅する道を歩いていると、太陽が昇ってきました。まぶしすぎるほどの光で。

Twitterでつぶやきました。

「なんという力強い朝の光!」

そのときの写真を大切にしています。


IMG_0831_web.jpg



こんな悲しみに満ちた大災害のときでも、とにかく朝日は昇ってくるのだと、自分の中に記憶しました。

以下、山本有三の「心に太陽を持て」を全文引用して、今週のブログを締めます。

心に太陽を持て。
あらしが ふこうと、
ふぶきが こようと、
天には黒くも、
地には争いがたえなかろうと、
いつも心に太陽を持て。

くちびるに歌を持て、
軽く、ほがらかに。 
自分のつとめ、
自分のくらしに、
よしや苦労が絶えなかろうと、
いつも、くちびるに歌を持て。

苦しんでいる人、
なやんでいる人には、
こうはげましてやろう。

「勇気を失うな。
くちびるに歌を持て。
心に太陽を持て。」

「95%ルールの撤廃」について昨年1月16日のコラムで書きましたが、あっという間に1年が経過しました。

この4月1日から始まる課税期間については、その年の課税売上が5億円を超える事業者は、消費税仕入税額控除の95%ルールが適用できなくなります。

消費税は、事業者が国に納付する場合に、顧客から預かった消費税(仮受消費税)から、その事業者が負担している消費税(仮払消費税)を控除して計算をします。これを仕入税額控除と呼びます。

現在のルールでは、この仕入税額控除を計算するときに、課税売上割合(受取利息や土地の譲渡などの非課税の売上と課税売上を合算した金額のうち、課税売上が占める割合)が95%以上であれば、全額控除ができます。これを95%ルールと呼んでいます。不動産業や医療法人などの特定の業種を除くと、多くの企業がこの95%ルールにより、仮払消費税の全額を控除しています。

95%ルールが使えなくなるとどのようになるのかというと、仮払消費税の金額に課税売上割合を乗じて控除できる金額を計算する(一括比例配分方式)か、仮払消費税を、課税売上に対応するものと、課税売上・非課税売上に共通して対応するもの、非課税売上に対応するものに区分した上で、共通の金額に課税売上割合を乗じた上で、課税売上対応の金額と合算して控除する(個別対応方式)によることになります。

要するに、課税売上が5億円超になることが見込まれる場合には、手間暇をかけて、仮払消費税を区分しなければ損をしてしまうことがあるということになります。

最終消費者が税負担をするというのが消費税の一般的な説明です。しかし95%ルールが使えなくなる事業者については、仕入や経費につき支払った消費税の一部を最終消費者なみに税負担をすることになるわけです。

企業として税負担を軽減するためには「個別対応方式」の検討は欠かせません。あと1ヶ月を切りましたが、95%ルール撤廃の対象になる会社は専門家と相談をして、新年度開始前までに十分な検討・対策をしておく必要があります。

先週はコラムをお休みしてしまいました。プライベートでやっているオーケストラの演奏会で時間がとれなかったためです。また継続して掲載してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

さて、2月20日の週刊「税務通信」を見て再認識したことがあります。

一定の要件を満たす寄付金については、平成23年度分の確定申告から寄付金控除(所得控除)に加えて、寄付金の税額控除が選択適用できることとなりました。

この寄付金税額控除の要件のひとつに、「寄付者の住所が記載された領収書」が必要とあります。

これまで寄付金控除の適用を受ける寄付金の領収書については、寄付者の住所の記載は求められていませんでした。税額控除の場合にのみ、領収書に寄付者の住所を必要とした趣旨がわかりません。

領収書に住所が記載されるかどうかは、専ら、寄付を受ける団体の事務に任せられることです。その領収書に住所が記載されていないことを持って税額控除の適用を受けることができなくなれば、寄付者の意図と異なることになると思います。

制度導入にあたって、寄付を受ける側の団体がこれら改正について十分な案内がなされていたのか気になります。

単なる私の不勉強であれば良いのですが、もし「寄付金税制拡充しましたので、あとは各自しっかり法律を読んで対応してください」というようことであったのなら、それは残念なことだと思います。

もしかしたら、世の中あちこちでこういったことが増えているのかもしれません。自己責任の範囲を超えている気がするのは私だけでしょうか。


先日、調布で行われた確定申告無料相談会に参加しました。副責任者という立場(実体は雑務担当)ですが、主に私の仕事は確定申告書の収受業務が中心でした。

日付が違うので、単純に昨年と比較はできないのですが、前年比で大きく来場者が減少した印象があります。

要因としては、年金所得者については、平成23年分からは,年金収入が400万円以下で,かつ,それ以外の所得が20万円以下の者については,所得税の確定申告が不要とされたことがあるのだと思います。

国税庁もずいぶんPRをしているので、相談会場に来られる方が減ったのだろうと思います。

もちろん医療費控除などがあることで所得税が還付となる方は還付申告をすることができますので、多くの年金所得者が還付申告書を提出していきました。当然の権利ですね。

ややこしいのは、所得税の確定申告が不要となっても住民税の申告が必要ということです。確定申告書を作成して確定申告の無料相談会場まで提出のためにいらっしゃった方で、申告不要に該当する場合には、申告不要である旨と住民税の申告が必要な旨のハンコを押してご案内しました。

住民税の申告をしないと、住民税を課する市町村としては所得を把握できなくなるのでやむをえないのだと思いますが、「申告不要」と頭に入ってしまうと市町村への申告も不要と思っている方が多いと思います。これまで市町村に申告などしたことはない人がほとんどだと思いますので。

国と地方の仕事を切り分けていくというのは、このように市町村だけに申告をするということも増えるような時代になっていくことなのかと想像してみました。

国民もみな努力をしていきましょう、と政治家が語る時代なのです。我々税理士も、その責務も発揮していかなければならないと思いました。

震災関連や今後の消費税増税議論で盛り上がる中で、静かに12月2日付で公布された平成23年の税制改正。その中で「更正の請求」期間が延長されるという改正が行われました。

「更正の請求」とは、申告書を提出した後で、所得金額や税額などを実際より多く申告していたことに気付いたときに、訂正を求めるための手続きを言います。(ちなみに所得や税額が増える時は、修正申告を提出することになります。)

これまで申告期限から1年しか認められなかった「更正の請求」が、今回の改正により、申告期限から5年に延長されました。

従来は、「嘆願書」という非公式文書により、減額更正をして、認められる場合がありました。

これまで納税者側から1年しか更正の請求ができなかったにも関わらず、税務署は3年間増額更正ができました。もともと法律的な権利が不平等であるのに、「嘆願書」という大時代的なもので対応するしかない状況が改善されたわけです。

もっとも今回の改正に合わせて、税務署も5年間、増額更正ができるようになりましたので、言わばガチンコ勝負といったところでしょうか。

権利が平等になったことは特筆すべきではありますが、変化の激しい時代に、5年間も遡って更正をされたり、更正の請求をすることは避けたいものです。

経営者や納税者の皆さまに安心して将来に目を向けて頂けるように、税理士として貢献していきたいと思います。

報道によると、消費税が8%になるときに低所得者ひとり1万円を給付する案がでてきたようです。

消費税の増税にあたっては、その逆進性(所得の低い人ほど税負担率が高まること)が高いと言われています。

これについては給付付き税額控除という制度が議論されており、逆進性の緩和のひとつの方法です。所得税から一定額を控除し、控除しきれない金額は納税者に給付をするという制度になると予想されます。

2015年に消費税が10%になるときまでに、納税者番号制(マイナンバー制)を導入し、より正確な所得把握がなされることを前提にして、給付付き税額控除の導入を検討するようです。

個人的にはこれは複雑な制度だと感じます。理屈が強すぎると思います。

逆進性というのは、お店に行って10%税金上乗せの支払いをするときに「感じる」ものではないでしょうか。それによって消費が抑制されます。給付付き税額控除制度を作ったから逆進性が解消された・緩和されたと言われても、自分の払った消費税との直接の関連はなく、実感しにくいのではないでしょうか。

まして、ひとり1万円の給付措置と言われても、消費税と何の関係があるのかわからなくなります。消費税をスムーズに導入するためのアメでしかなく、こういったことに判断が影響されてはいけないと思います。

今後も消費税増税に向けて、いろいろなアメが飛び交うことでしょうが、冷静に見て行きましょう。

職業がらでもありますが、過去一年ほどずいぶん新聞報道で税制改正が賑わっていた気がします。

そこで、現在研修講師を務めていることもあり、ここ一年の税制改正の経緯を整理してみました。

① 平成22年12月16日

平成23年税制改正大綱が発表。法人税の減税、相続税の増税など、話題の改正が目白押しでした。民主党政権になっての本格的な大改正が発表されました。

② 平成23年3月11日

東日本大震災発生。

③ 平成23年3月31日

6月まで租税特別措置法などの期限切れ法律を延長する法律が成立。震災とねじれ国会の影響です。3月31日に改正税法が国会を通らないという異例の事態でした。

④ 平成23年4月27日

震災特例法公布。震災関連の寄附金の拡充、雑損控除の期限延長などが盛り込まれました。

⑤ 平成23年6月30日

平成23年税制改正大綱の一部が成立。年金所得者の申告不要制度や消費税の免税判定など実務的な重要項目も成立しています。

この後半年、何も決まらず。

⑥ 平成23年12月2日

復興増税の施行(所得税が平成25年〜49年まで2.1%増しとなるなど)および平成23年税制改正の一部が施行(更正の請求期間が5年に伸びる、当初申告要件の廃止など、実務的に重要な改正)

⑦ 平成23年12月10日

平成24年税制改正大綱が発表。給与所得控除の上限設定など。

⑧ 平成23年12月14日

震災特例法第2弾の施行

⑨ 平成24年1月6日

社会保障・税一体改革素案の発表。消費税増税、相続税増税など。

以上です。

振り返ると、平成23年税制改正大綱は、そこに全てが書き込まれているかのような壮大なものでした。

結果的には、税の根本にかかわるような重要事項は先送りとなっていますが、実務で重要とされる多くの事項が導入されています。

特に更正の請求期限や当初申告の廃止などは、税の世界では課税庁と納税者が同じ土俵にあがるという意味ではエポックメイキングな改正です。

あらためて整理すると、我々税理士は、政治に翻弄される華やか(?)な改正ばかりでなく、このような地味(!)な改正にきちんと目を向けている必要があると思いました。

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