「95%ルールの撤廃」について昨年1月16日のコラムで書きましたが、あっという間に1年が経過しました。
この4月1日から始まる課税期間については、その年の課税売上が5億円を超える事業者は、消費税仕入税額控除の95%ルールが適用できなくなります。
消費税は、事業者が国に納付する場合に、顧客から預かった消費税(仮受消費税)から、その事業者が負担している消費税(仮払消費税)を控除して計算をします。これを仕入税額控除と呼びます。
現在のルールでは、この仕入税額控除を計算するときに、課税売上割合(受取利息や土地の譲渡などの非課税の売上と課税売上を合算した金額のうち、課税売上が占める割合)が95%以上であれば、全額控除ができます。これを95%ルールと呼んでいます。不動産業や医療法人などの特定の業種を除くと、多くの企業がこの95%ルールにより、仮払消費税の全額を控除しています。
95%ルールが使えなくなるとどのようになるのかというと、仮払消費税の金額に課税売上割合を乗じて控除できる金額を計算する(一括比例配分方式)か、仮払消費税を、課税売上に対応するものと、課税売上・非課税売上に共通して対応するもの、非課税売上に対応するものに区分した上で、共通の金額に課税売上割合を乗じた上で、課税売上対応の金額と合算して控除する(個別対応方式)によることになります。
要するに、課税売上が5億円超になることが見込まれる場合には、手間暇をかけて、仮払消費税を区分しなければ損をしてしまうことがあるということになります。
最終消費者が税負担をするというのが消費税の一般的な説明です。しかし95%ルールが使えなくなる事業者については、仕入や経費につき支払った消費税の一部を最終消費者なみに税負担をすることになるわけです。
企業として税負担を軽減するためには「個別対応方式」の検討は欠かせません。あと1ヶ月を切りましたが、95%ルール撤廃の対象になる会社は専門家と相談をして、新年度開始前までに十分な検討・対策をしておく必要があります。