職を見つけること自体が厳しい時代ですので前ほど言われなくなったように思いますが、高度成長期のころなど、「サラリーマンは必要が認められていないので個人事業者と比べて不利だ」みたいなことを言われていました。重税感を表現するのに、クロヨンという言葉が使われていました。
サラリーマンは仕事に使うスーツだって、靴だって自分の給料で払っているのに、経費として認めてもらっていない、これは納得がいかないという意見です。
しかし、知っている方は知っている通り、必要経費は基本認められていませんが、サラリーマンにも「給与所得控除」という控除があります。
年間給与の額によって決まってくる給与所得控除ですが、給与の金額に応じて、給与の40%〜5%までの金額を控除することができます。
会社が所得税を源泉徴収してくれていると、この給与所得控除というものの「ありがたさ」がわかりにくいのですが、個人事業者の確定申告を作っていると、給与所得控除の「ありがたさ」がよくわかります。
必要経費というのは、所詮使ってしまったお金です。一方で、給与所得控除は、「概算控除」のようなもので、実際にはスーツも靴も買い替えずにがんばれば、お金が手元に残っているにも拘わらず、所得からの控除が認められます。
私も税理士として自分自身の確定申告を行ったときに、サラリーマン時代に享受していた給与所得控除の「ありがたさ」がよくわかりました。
一方でこの「実際の支出が伴わないのに控除ができる仕組み」を享受するために、個人事業者が法人成りをすることがあります。いくら所得が高い人でも必ず5%の控除が認められています。青天井です。
これを改正して、給与所得が1,500万円を超える場合には、給与所得控除を245万円までしか認めない、という改正が平成24年税制改正で行われます。今月の国会で通れば、平成25年から適用されます。
そもそも給与所得控除は概算経費の性格を持っているということであれば、青天井である必然性はないということなのかもしれません。
しかし、クロヨンと言われサラリーマンの重税感が叫ばれた時代と異なり、今後は安定したサラリーマンに概算経費を認められるなんてけしからん、と言われる時代が来るのではないでしょうか。
とは言え、財務官僚自身、政治家自身の身にふりかかる給与所得控除の制限がこれ以上拡大することはないのかもしれません。ならばこの厳しい時代、個人事業者の税制に恩典を与えても良いのではないでしょうか。
たとえば、複式簿記の帳簿を「適時」に作成している事業者には、青色申告控除額を拡大するなどです。1年間の帳簿をまとめて作っている事業者と、日々こつこつ帳簿付けをしている事業者と同じ65万円の控除ではさびしいと思います。なんたって給与所得控除は、何もしなくても最低65万円からスタートするのですから。
みなさまどう思いますか?