日本の消費税を平成26年4月に8%、平成27年10月に10%に上げるということで、政局は混乱しています。
この10%という水準の意味合いを、諸外国の消費税(付加価値税)の税率の推移を見ながら考察してみましょう。添付は財務省のHPに公開されている図表です。

1970年前後に、ヨーロッパの主要国で導入されたときに、既に10%という税率で開始されました。少しづつ税率が上がり、20%前後になっている国が多いことがわかります。
一方、日本は20年ほど後の1989年に3%で導入。平成7年に5%に上がったのを最後に定着しています。
日本の財政赤字が大きいのは厳然たる事実です。歳出の半分を国債の発行で賄っているわけですから、増税論議は当然の話ということになります。しかも、諸外国に比べる限りにおいては、日本の消費税率はまだまだ低い水準です。
グローバル社会の中では、租税条約の締結なども通じ、税制も均一化してきています。大きな枠組みとしての税制は、他国とのバランスも視野に入れざるを得ない面があります。
誰でも税金が増えるのは嫌なものです。毎日の買い物の値段が高くなるのは、困ったものです。できれば消費税は今のままであって欲しいと思います。
では、消費税が10%になってしまったら暗黒の世界がやってくるのかといったら、そんなことでもないと思います。20%といった付加価値税の世界で、ヨーロッパの人々は生きているわけです。
日本でも消費税のなかった時代と比べ、現代において5%の消費税を払っても世の中は回っています。消費税が景気悪化の時代と重なっていますが、消費税こそが景気悪化の原因だと言う分析は、短期的にはあっても中長期的にはないのではないでしょうか。
もっとも消費税の増税については、中小企業者の税転嫁の問題や、低所得者の負担軽減など、解決すべき問題はたくさんあります。これは消費税が、経済的に中立的であるためにも不可避な課題です。
この増税をチャンスに変えることができる点があるとしたら、国民が「税」の意識を変えるきっかけになることではないかと思います。
10%になれば国民が買い物の都度、税の痛みを感ずることになります。これは国民の税へ関心が高くなるとともに、税金の使い道にも関心が高くなることを意味します。
欧米人は日本人よりはるかに税への関心を高く持っていると聞きます。日本人は、これまで「お上まかせ」で来ていましたが、震災や原発の問題を通して「お上にまかせてはおられない」という意識が芽生えてきたように思えます。
大法人による法人税や高所得者の所得税、サラリーマンの源泉税で社会が賄えていた時代は、国民の義務である「税」にも関心を高く持てないのかもしれません。
消費税という税を負担することによって、日本国民が、日本をどうしていこうか、どういったことにお金を使っていこうかということに関心を持てるようになれば、増税も意味を持つのではないでしょうか。ピンチがチャンスで、日本が力強くなるきっかけになって欲しいと思います。
楽観的に過ぎると言われるかもしれませんが、毎日の実りのない政局の報道に接していると、そういう希望を持たずにはいられません。