平成23年の税制改正では、法人税の税率が引き下げられて減税とされる一方で、相続税の増税や所得税の増税などが行われる予定です。
しかし、今後の税制改正での本当の大物はやはり消費税の税率アップによる増税だと思います。
ところで、消費税は「消費者が買い物をするときに払い、事業者がそれを預かり国に納める税金」である、と理解されている方がいらっしゃるでしょうか?
「え、その通りじゃないの?」と思う方がいれば、それは間違いです。
消費税法第5条にはこう規定されています。「事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。」
つまり、消費税を納税するのは、事業者であって消費者ではないのです。消費税を納付しなければならない事業者は、消費税相当額をお客様から頂かないと、その事業者の売上が減ってしまいますので、消費税として5%を頂くことになります。
このことを「消費税を転嫁」すると言います。
サラリーマンが会社から給与をもらうときに、所得税を源泉徴収されていますが、これは間違いなくサラリーマンの所得税です。しかし、消費者が買い物のときに払う消費税はあくまでも「消費税相当額」であり、物の対価に過ぎません。
したがってお店が納得してくれれば、消費税分を「値切る」ことをしても、消費者は脱税になりません。でも消費税をいちいち値切られていたら、お店は消費税を持ち出しで国に払うことになりますので、お店に頼んでも消費税を値引いてくれません。
でも、この消費税の税率が、仮に5%から10%や15%、もしくは20%などになったらどうなるでしょう。
「はい、増税分です」とある日突然値札を上げることができるでしょうか。そうです、今はすっかり店頭での「総額表示」が定着していますので、なかなか増税分全額を転嫁して値上げするのは難しいのではないでしょうか。
事業者間の取引であれば、もっと深刻だと思います。大企業と取引をする中小企業では、増税分を転嫁できないケースも多いと思います。
それでも、消費税を納税するのは事業者です。納税しないと脱税になってしまいますので、売上を削って納税をすることになります。いくら法人税の税率が下がっても、消費税でもっていかれるというのが実態になるかもしれません。
中小企業が困ったって構わないなんて言ってはいけません。日本社会を支えているのは、中小企業なのですから。
消費税の増税論議については、今後も継続的にコラムで書いていきたいと思います。