相続税は、相続によって取得した財産に対して払う税金です。
相続する財産が、不動産などが大部分で現預金が少ない場合には、相続税を払うお金が不足する場合があります。
納税資金が不足する場合には、「延納」すなわち分割払い制度があります。さらに「延納」でも納税が困難な場合に、「物納」制度があります。相続財産そのもので納税する制度です。
所得税などでは「延納」や「物納」は認められていません。さすが相続税は財産に対する税金だから行き届いているな、と言いたいところです。
しかし「延納」「物納」は簡単ではありません。
相続した財産に現預金が少なくても、相続人の固有の現預金で支払える場合には、その中から支払う必要があるのです。
そうは言っても有り金の全部を使って払いなさいと言われても相続人の生活があります。どのように見てくれるのでしょうか。
相続人の現預金から、その相続人および家族の3か月分の「生活費」を控除した金額を控除した金額が、「納税可能な金額」と見られます。
この金額を超えた場合に、延納の申請が可能となり、さらに延納も難しい場合に「物納」が可能となります。
では、その「生活費」の計算はどのように行われるのでしょうか。実は、金額が一律に決まっています。
相続人ひとり月10万円+家族ひとり月4万5千円で計算します。
例えば、奥さまと子供ふたりならば、ひと月分は、10万円 + 4.5万円 x 3人=23万5千円になります。3ヶ月分は70万5千円
この金額は、国税を滞納したときに給料を差し押さえるときの基準によっています。
どう思われますか?
これで十分だと思うか、少なすぎると思うか、さまざまかもしれません。でも日本全国、各家庭さまざまな事情がある中で、あまりに画一的な気がします。
住宅費や教育費の負担が大きい世帯では、ちょっと少なすぎるのではないでしょうか。個別に事情を加味してもらえる余地はあるようですが、どのくらい見てもらえるかはわかりません。
税務行政の円滑な執行のためには、やむをえないということなのでしょうが、国のメッセージとしては、延納・物納に頼るなよ、ということなのだと思います。
ちゃんと納税資金が足りるように、プランをしておきなさいよ、ということなのでしょう。
でも相続は、突然やってきます。我々税理士も「プランをしておきましょう」と言いますが、そんな余裕もなく、相続を迎える場面も避けられないことがあると思います。
もう少し生活費は細分化したルールで算定して欲しいところです。所得税などでは、所得控除はかなり細かく決められているのに、ここではずいぶんざっくりです。
「やっかみ気質」が高い日本人の作るルールなので、財産を取得した人はもらったのだからいいだろう、みたいな考えがあるのでしょうか。
みなさまはどう思われますか?