平成24年度税制改正大綱が12月10日の未明に閣議決定されました。大きな目玉はありません。
目立つ所では、次のふたつです。
・給与所得控除の上限設定(給与収入1500万円超は一律245万円)
・勤続年数5年以下の法人役員などの退職金について2分の1課税を廃止
平成24年度での相続税法の大改正はなくなりました。私たちも含め多くの税理士は、今年は増税への注意喚起をずっと続けていましたので、ホッとする方も多いと思います。
それにしても、この目玉のない税制改正大綱からは、野田首相の消費税導入への意気込みが感じられます。
先日、所属する税理士会から派遣される講師として、青色申告者向けの決算説明会で話をする機会がありました。私は消費税の説明担当だったのですが、せっかくの機会なので、消費税のしくみをきちんとお話してきました。
消費者として消費税を負担することに慣れている人でも、事業を始めて消費税の納税義務者であることが、果たしてどういうことであるのかを伝えました。
きちんと税の転嫁をしないと、事業者に利益が残らないことになってしまいます。5%が10%になったときに、税を転嫁できないと大変なことになります。
世の中「益税はまかりならん」と言われることは多く、それもその通りなのですが、一方で「免税事業者から課税事業者になりました」と言って、請求額を10%増額させることが可能かというと疑問です。
免税事業者のうちから、コストに含まれる消費税相当額をカバーする趣旨で、それなりに売上に消費税相当額を上乗せして請求すべきだろうと思います。
消費税は経済活動には中立的だと説明されますが、こう考えていくと単純ではありません。
5%を10%に上げると消費税収は倍増するという試算なのかもしれませんが、経済活動をするのは人間であることがどう働くのでしょうか。
壮大な実験が始まるような気がしますが、税理士として何ができるのかを考えなければいけない時期になってきました。